第2回茶林杯1000字小説コンテスト


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 第2回茶林杯1000字小説コンテストは、馬車馬堂&御茶林研究所開設10周年記念として計画された小説コンテストです。
 4月7日から5月5日までの期間で作品を募集し、5月7日から5月25日までの間に作品投票を行いました。
 最終的に集まった作品数は21点。投票総数は121票となりました。
 作品投票にて投票された票数と主催者である私によるランキングポイントを合計して、そのポイントで順位を決定いたしました。


■ 1000字小説グランプリ 爆闘王 ■

「これで貴女もFカップ」
【作者】姫林檎カヲル さん
【獲得ポイント】10+1= 11pt

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「魅惑のバストメイキング☆エフカップ・ゴールド」
 効能:ちちをFカップに成長させます。貴女はもちろん、彼氏も大満足!


■ 1000字小説銀賞 ■

火星温泉遥かなり
【作者】松潮本零字 さん
【獲得ポイント】9+2= 11pt

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「ん、私かね。私は元・火星の大統領だ」
 しまった、と後悔した。
 ここは某県山中にある「火星温泉」。昼夜問わず空に火星がある時のみ湯が湧き出るという不思議な温泉である。ものめずらしさにこのゴールデンウイークに訪れ、夜の露天風呂に漬かってみたわけだ。今は、知らない筋肉質の男性から差し出されたちょこを受けた直後だったりする。お礼ついでにどこから来たか聞いたのが間違いだった。


■ 1000字小説銅賞 ■

人生ゲーム
【作者】BUTAPENN さん
【獲得ポイント】7+3= 10pt

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「人生はナンバープレイスだ」
 運転席の彼は突然、語りだした。ハンドルを握ると、理屈っぽくなる性格らしい。
 縦横の各列に同じ数字を入れてはいけないという、あのパズル。一生の幸不幸を全部並べても、つまるところ総計は一緒。努力して生きても何もならないというのが、彼の哲学だ。
「そうかなあ」
 と助手席の私。


■ 1000字小説茶林特別賞 爆乳王 ■

偽乳キャンセラー
【作者】sleepdog さん
【獲得ポイント】7pt

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 日本はどこまでアメリカ化していくのだろうか。占領下に下地を作らされたものはもう歴史的に仕方ない。また、戦後の若者たちに押し寄せたアメリカのファッションやカルチャーは誰も止めようがなかった。だがしかし! だがしかしだ!
 恐ろしいのは、この事実。アメリカは美容整形大国である。この子の七つのお祝いに、は日本の映画だが、アメリカでは娘の十六の誕生日記念や高校卒業記念に両親が豊胸手術の費用をプレゼントするという話も決して珍しいことではない。そもそも母親のバストが偽物なのだから、いわんや娘をやなのだ。


おめでとうございます!


■講評
 総投票数121票。それらの票数と主催者である私によるランキングポイントを合計し、順位を弾き出したところ以下のような結果となりました。

11pt:火星温泉遥かなり / 「これで貴女もFカップ」
10pt:人生ゲーム
8pt:独りごちる午前3時
7pt:変身(モシャスじゃない) / ユーディットの指南書 / 偽乳キャンセラー
6pt:パンダ病院 / 緑は地球を救う
5pt:外に出てはいけない / 花街の掟 / 愛の遺産 / そして主役は旅立った / 北のキャラメル
4pt:アゲハ蝶 / かつて一度は生を受けたもの / 月下の宴
3pt:だって…好きだから / 日記から / 遠い海の記憶

 接戦であったことが伺えます。
 そんなに隠してもいませんでしたが、今回の隠しテーマは「元気」でした。ですので私の票は個人的に元気を貰ったなあ、という作品に投じさせていただきました。『人生ゲーム』に3pt、『火星温泉遥かなり』に2pt、『「これで貴女もFカップ」』に1ptを加えさせていただき、上記のような結果となっております。これにより『火星温泉遥かなり』と『「これで貴女もFカップ」』が同数一位となりましたが、読者得票数を優先とし、『「これで貴女もFカップ」』を爆闘王、『火星温泉遥かなり』を銀賞、『人生ゲーム』を銅賞に選出しました。
 また茶林杯の裏グランプリ、貰って微妙な特別賞「爆乳王」には、独断と偏見で『偽乳キャンセラー』を選出いたしました。これには投稿期限に遅刻して結果的に投稿締め切りを延ばし、松浦上総さんの投稿を呼び寄せた、作者であるsleepdogさんへの感謝の気持ちも込めております。ええ、感謝ですとも。
 茶林杯ということもあり、全体的に笑いに主眼をおいた作品が中心に集まり、また票も伸びたようです。逆に、それ以外の正統派は苦戦することになったようです。ええと、まあ、ごめん。
『アゲハ蝶』は水商売で働く女性を主人公に据えてシーンを切り取った作品。細かい描写の一つ一つがダブルミーニングになっている技巧的な作品です。
『かつて一度は生を受けたもの』『愛の遺産』『月下の宴』『遠い海の記憶』は正統派である故苦戦した作品ではないかと思います。場所が違えば人気の出た作品ではないかなあ、と個人的には思っています。
『外に出てはいけない』『だって…好きだから』『花街の掟』『「これで貴女もFカップ」』『そして主役は旅立った』はショートショート的な作品群。馬車馬堂も御茶林研究所も、普通のショートショートサイトだった時代もありました。こういう作品は好きなのです。
『変身(モシャスじゃない)』の作者である佐藤五三郎さんは私のゲーム制作仲間でもあります。そんな五三郎さんらしさが全開の作品でした。
『パンダ病院』は不思議な作品。他とは毛色の違う作品で、私個人としても興味深い一品でした。
『人生ゲーム』は今回一番のお気に入り。何と言ってもレトリックが素晴らしい。終盤の台詞回しは誠に見事でございました。元気を貰いました。
『ユーディットの指南書』『日記から』『北のキャラメル』『緑は地球を救う』はテクニカルな作品群。前提情報を共有しているかどうかで作品の面白さが変わるでしょう。その中で票を集めた『ユーディットの指南書』は見事であると思います。
『独りごちる午前3時』は新たな価値観の提示という面でとても貴重な作品であると思います。
『火星温泉遥かなり』『偽乳キャンセラー』は茶林杯ならではの作品といえたでしょう。ここではあえて何も語るまい。

 総評として。とても楽しめたコンテストとなりました。なにより、期間中の盛り上がりが凄かった。作品を投稿してくださった皆様と読者として参加してくださった皆様、宣伝にご協力くださいました皆様に、改めてお礼申し上げます。
 本コンテストはこれで終了いたします。ですが本コンテストを通じて広がった交流や、得られた感性は継続していくものだと思います。それらを大切にしていただきたいと思います。また今回初めてお知り合いになれた皆様におかれましては、今後とも親しくしていただけましたら嬉しく思います。

 どうも、ありがとうございました。


(茶林 小一 2009.05.26)

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◆協賛・宣伝協力サイト◆

カフェ・ノワール / 瀬川潮さん

篁文箱 / 篁頼征さん

ノンタイトル / 三里アキラさん

Abounding Grace / BUTAPENNさん

500文字の心臓 / 峯岸さん

白紅胡蝶 / 侘助さん

Sleepdog's Salon 〜幻想と冒険小説の庵〜 / Sleepdogさん

題名未定 / 楠沢朱泉さん



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