このバカSFがすごい!

■ 火星人ゴーホーム / フレドリック・ブラウン

 早いもので、この連載もいつの間にやら5回目になりました。
 今回は、海外作品でバカSFといった場合に真っ先に名前が挙がるであろう作品、『火星人ゴーホーム』をご紹介します。
 初出は1955年なので、これまたかなり古い作品であります。読んだことはなくても作品名は目にしたことがある、という方は多いのではないでしょうか。
 読まれたことのある方には言わずもがなであろうと思いますが、私の作品にも本作のパク……影響を受けている作品が幾つかあります。
 まずオープニングの、はじめに一つ二つだけ事実を語っておいて、その後に嘘話ばかりを重ねていくという手法。正しい歴史からどんどんと嘘の歴史をつくってゆきます。
 そして、本編の冒頭は、このように始まります。

 なぜこの男からはじめるのかって? 知れたことだ。どうせ、どこかから始めなくてはならないではないか。

 原文を読んだことがないので、原文がよいのか、訳がよいのかはわかりません。ですが、幼いながらにこれを始めてみたとき、私は驚愕しました。そして、悟ったのです。
 ああ、作者は読者に喧嘩を売っていいんだ、って。
 以後、YWCAを皮切りに、色々なモノに喧嘩を売りながら、作品は火星人の生態を綴っていきます。が、そんな本編はどうでもよろしい。
 ここで当研究所名物の、あの言葉を提示させていただきましょう。
 小ネタはときに、本編以上に大切だ。
 とにかく全編、皮肉混じりの小ネタオンパレード。むしろそっちがメインと言っても過言ではありません。先ほどの冒頭もそうですが、数々の小ネタに触れるだけでも、読む価値はあると思います。読むべし。

 大きな本屋さんなら、棚に並んでいる場合もあるかもしれません。が、基本的には注文することになりそうな予感。
 海外SF、バカSFの入門書としても、お薦めの一冊です。

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(C)Chabayashi Shouichi 2010.

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