ゴッドハンド


 俺には不思議な力があった。
 大きな声で喧伝できるものではない。だから、このことは両親を含め誰も知らなかった。ただ双子の兄だけが、俺のこの力に気付いていた。
 この両手で女性の乳房を揉むことにより、双丘を飛躍的に増大させる。例えるならば、夏蜜柑をグレープフルーツに、グレープフルーツをメロンに生長させる。それが俺の力だった。俺の手には、類い希なる豊胸力が備わっていたのだ。
 力に気付いたのは、三人目の彼女ができたときだった。俺は三度目の恋愛で、初めて女性と肉体の関係を持った。
 付き合い始めた頃の彼女は、スレンダーで胸の小さい、モデル風の美女だった。ところが、関係を持ってからわずか一ヶ月の間に、Aカップだった彼女の胸は推定Fカップにまで成長し、身体の線もまろやかな女性味を帯びてきたのだった。体型に密かなコンプレックスを抱いていた彼女は大喜びしていたが、すでに俺好みの女ではなくなっていた。
 その後も俺は、何人かの女性と付き合った。が、肉体関係を持つや否や、彼女たちは徐々に胸が大きく、色っぽい体型に変化していった。16歳の少女を恋人にしたこともあるのだが、そのときもやはり、少女はすぐに年齢に似つかない肉体へと変貌を遂げてしまった。
 何か理由があるに違いない。そう言ったのは、兄だった。
 これだけ連続して同じことが起こるのなら、何か理由があるはずだ。それが兄の考えだった。
 要因として考えられるのは、お前の手しかない。一度病院で検査を受けてみろ。兄は俺にそう勧めた。一人の女性と長続きしなくて困っている、俺を見かねての忠告だった。
 俺は病院で検査を受けた。
 結果はすぐに出た。俺の掌には、女性ホルモンの働きを活性化させる効果があることがわかった。この力はどんな男性にも備わってはいるらしいのだが、俺の場合はその効能が顕著なのだという。
 治せないのかと聞いたら、意外そうな顔をされた。世の中にはまだまだ巨乳好きの男の方が多いようだった。
 報告を聞いた兄は、自分の推理が当たっていたことをたいそう喜んだ。そして、
「お前にそんな力があるのなら、俺にも何かあるかもしれない。早速俺も見てもらおう」
 と、勇んで病院へ向かった。そういえば、兄も巨乳好きだった。
 数時間後。兄が意気消沈した顔で帰ってきた。
 力は見つからなかったのか、と聞いた。
「見つかったよ」
 と答えが返ってきた。だが兄の顔色は、まったく冴えないものだった。
 兄は、頭を抱え、地面にへたり込んだ。
「お前の力が女性ホルモンの活性化。その時点で、気付くべきだったんだ。もしかしたら俺には逆の力が備わっているかもしれないって。しかも、俺の場合は掌じゃないんだ。俺の場合はこう、尻の穴で男のナニを……」

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