◆タコクリ読みたい
「つまりあんたたちは俺を主人公にクリスマス作品を書きたいというんだな」
俺がそう問いかけると、横一列に正座している作家人たちが同時に頷いた。
「クリスマスといえば、赤緑金と相場が決まっています。ですから赤を象徴するあなたに……おタコ様に、ぜひ出演していただきたいとまあこう思います次第で」
眠犬と名乗った作家が揉み手をしながらまくし立てた。最近顔色が緑がかってきたような気がするが、どこか悪いのだろうか。
「しかしどうせならもっとクリスマスらしいモノを使えばいいだろう。何も俺じゃなくても」
斑虫と名乗った作家が進み出た。
「あなたでなくてはいけないのです! でないと私は皆さんの奴隷にならなくてはならないんです! 奴隷になったが最後、私は皆さんにあんなことやこんなこと……ああっ、想像するだけで濡……身震いします」
それは自分で自分の首を絞めているだけではと思ったが、口には出さなかった。
「……ところで、緑と金は?」
「それはもう用意してあります」
斑虫の隣に座っていた覆面作家が背中から何かを取りだした。
カッパと金目鯛だった。
「クリスマスに全然関係ないと思うんだが」
「大切なのは心意気です」
「金目鯛は金よりもむしろ赤の方が多いし、それで用は足りると思うんだが」
「大切なのは心意気です」
心意気というのは便利な言葉だと俺は思った。俺は八本の足で複雑な足組みをした。
「……仕方がない。今回だけは協力してやろう」
作家たちの顔が明るくなった。俺はそれを見ながら、言葉を続けた。
「だが一つ、条件がある」
数日後。
サロンの奥底に封じられていた異界へのゲートが、何者かの手によって開かれるという事件が起こった。これにより、クリスマス・パレードには魑魅魍魎が溢れ、ネタの飛び交う戦場と化した。
状況から、この事件は内部のものの犯行と断定された。
カッパと金目鯛、そしてタコだけが、パレードの行われている通りで盛大に踊り狂っていた。
※参考文献
クリスマス・パレード:http://sleepdogms.exblog.jp/i6
Sleepdog's Salon:http://www.geocities.jp/sleepdog550/
たれファンタ:http://www6.plala.or.jp/cicindela/
(2004.12.14)